2021.11.17

子どもと過ごす自粛生活~自宅保育、テレワークなど子育て家庭のリアル~

 

 

今年1年は長引くコロナ禍で、制限された生活を続けていくのに疲れてしまった人も多かったと思います。今回は、自粛期間を子どもと一緒に過ごした親のリアルな1日のスケジュールや、子どもと過ごすアイデアなどを紹介します。また、ママやパパが気持ちを保つための方法を専門家に教えてもらいました。

 

 

長期化した自粛生活
複雑な親の心情

 

昨年から続くコロナ禍により、小さな子どもとの自粛生活を続けているキャロットスタッフからは「毎日何をして子どもと過ごそうか、ネタ切れしている」「食事の用意が大変」「テレビを見せてばかりになってしまう」などの声が聞かれました。

日常生活が制限される中、エネルギーに満ちあふれた子どもと長期間自宅で一緒に過ごした結果、体力的にも精神的にも疲れてしまった人が多かったのではないでしょうか。

また、共働きの家庭では、テレワークが可能でも、子どもを見ながらいつものように仕事をすることは難しいという現実も浮き彫りになりました。

再び自粛生活になったときに備えて、実際に自宅で子どもと自粛生活を経験した家庭の1日のスケジュールなどを参考に、わが家の場合はどうするか、一度シミュレーションしておくといいかもしれません。

 

 

14日間自粛生活を経験 自宅保育・山内嘉世さんの場合 8月中旬に保育園の休園とその後の登園自粛要請を受け2週間、山内嘉世さんは保育園児を含む子ども3人と自宅で過ごしました。自粛期間 保育園休園6日間(盆休み含む)+登園自粛8日間 保育園併設の学童に通う小2の逞くんも自宅学習に。2歳児は目が離せない 2歳の娘はまだ目が離せません。午前中はマンツーマンの時間が続きます。かわいいわが子といえども、遊びが単調なので、疲れます…。キャロットスタッフ 写真左から逞くん(8)、悠くん(6)、英ちゃん(2)、嘉世さんセラピストの仕事している嘉世さんはコロナ禍で活動自粛中。夫の崇(たかし)さんは公務員。自粛期間は、夫がテレワークと有休を利用し夫婦で子育てに対応。ご飯は簡単でいい! 食事は基本的にご飯と納豆があれば大丈夫と割り切っていました。おかずが欲しいときは、肉や魚を焼くだけなど簡単に済ませていました。長男は卵焼きを自分で作ることも。自粛生活が子どもの家事力アップにつながりました。運動も組み込んでストレス解消! 家の中ばかりにいると、運動不足に。夫がキックボクシング用のミットを購入し、子どもは思いっ切り殴ったり蹴ったりして、ストレス解消していました。また、夕方、家族みんなで密を避けて田んぼに行き、1時間ほど散歩をしました。ここが良かった! 県産茶の研究の仕事をしているので、夏は畑作業と事務仕事で繁忙期だった夫。そんな中、一人で子どもの面倒を見て疲れた私を見かねて、有休を取って協力してくれた時は、夫が救世主に見えました。 初めの数日は、感染の可能性も考え、完全に外出自粛。遊びのマンネリ化や運動不足などストレスが増えたため、後半は密を避けて外出しました。イライラが爆発する前に夫に吐き出し、その都度ガス抜きしていました。夫婦で協力したことで、家族の絆も深まりました。

 

Time Schedule起床、ご飯を炊いておにぎりを作る 長男と次男はブロック遊び おにぎりができると、みんなで朝食 長女と遊ぶ 昼食(納豆ご飯) 動画配信サービスを利用し 子どもと一緒に楽しめる映画を見る 夫に子守を委ねる。子どもたちはボクシング用のミットで運動。自分の時間を持つ 散歩 夕食(焼きそば) お風呂 みんなで就寝

 

 

 

 

計4回の臨時休園を経験 テレワーク・前田育恵さんの場合 昨年からのコロナ禍で4度の保育園休園を経験した前田育恵さん。夫婦で試行錯誤の結果、有休とテレワークで乗り切ったそうです。自粛期間 2日間の休園が3度 9月半ばに10日間の長期休園 写真左から前田育恵さん、娘の夏希ちゃん(2歳)、夫・朋宏さん 育恵さんはデザイナーで時短勤務。会社員の朋宏さんも多忙。自粛期間中は毎日、夫婦で半日ずつ夏希ちゃんの面倒を見た。子どものご飯は作り置き 娘のご飯は週末に作り置き。仕事の後は料理をする気が起きないので、先取り家事を実践。中華丼やハンバーグ、お好み焼きなどが多い。おなかをすかせた娘に素早く対応できます。夏希ちゃんを見ながらの仕事は無理! テレワークを試みるも、「ママ、ママ」と追い掛けてくる娘。試行錯誤の結果、仕事をしながらの子守は諦め、半休を取った夫と交代しながら対応。午前は私、午後は夫が子守をするパターンに落ち着きました。午後はテレワークに集中 午後半休で帰宅した夫に娘を託したら、テレワークに集中。デザイナーの仕事は締め切りがあるので、“自分がこなせる量”を正確に把握し、同じ仕事に関わる人に伝えていました。頼りになる後輩にたくさん助けてもらいました。娘の成長を実感  一緒に過ごす時間が増え、娘ともじっくり向き合って会話を楽しむことができました。話していて気が付いたのは娘の語尾が「~たい」と熊本弁になっていたこと。保育園の先生の熊本弁を耳で覚えたのでしょう。「抱っこったい」と言う娘に癒やされました。 午後は夫に娘の世話をバトンタッチし、テレワークに取り組みました。急な休園で苦労したのは、職場への連絡とデータのやりとりでした。早朝、他の人の出社前にデータを取りに会社へ行ったこともありました。その後、後輩とデータの保管場所を共有するなど急なテレワークになっても対応できるよう情報を共有しています。

 

 

Time Schedule 起床。起き抜けに目が合った娘の「イヤ」から一日がスタート 娘の着替え 娘に朝ご飯を食べさせる 夫出社。午前勤務 朝ご飯 掃除 業務のメール チェック、返信 娘と近所の公園で遊ぶ 帰宅 昼ご飯支度・食事 夫と娘の相手を交代 テレワーク開始 制作、メール・電話で打ち合わせ テレワーク終了 夕飯の支度・食事 夫と娘はお風呂 娘の寝かしつけ お風呂 洗濯、フリータイム 就寝

 

 

 

キャロットスタッフおすすめ おうち時間の
アイデア 子どもと家で過ごす中で、「これは良かった」というアイデアをキャロットスタッフに教えてもらいました。パパママが心の余裕を持つためにできることも紹介します。団子粉コネコネお菓子作り 団子粉を使って、コネコネ好きな形を作って遊びます。団子粉に水を入れて混ぜたときの感触が気持ちいいようで、何度もやりたがります。口に入れても安全だし、できた団子はおやつにもなるし、一石二鳥です。(中村希未さん)おうちでかくれんぼ 家族全員で、家の中をフルに使ってかくれんぼをしました。私や夫も本気になって楽しめました。結構スリルがあって、子どもは何度もやりたがりましたよ。(林淳子さん)園の活動予定表の真似をする 幼稚園や保育園の1日のスケジュールや活動予定表をスマホで検索して、家でもできそうなことをまねしています。保育士さんが考えた予定表は参考になります。(後藤恵理さん)虫の観察 ダンゴムシやバッタなどを近くの公園で捕まえてきて、飼ってみました。何を食べるのかを子どもと一緒に考えたり、調べたりしました。生き物を育てることの難しさを一緒に学びました。(関川礼乃さん)

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心に余裕を持つためにしたことorやめたこと したこと 家事貯金をする 買い物に行ったら、その日のうちに野菜や肉を切っておき、即冷凍! まな板を洗うのが一度で済むし、料理の時短にもなってとても便利。家事を先取りし、ゆとりを生み出す“家事貯金”。本を参考に実践しています!(林淳子さん)やめたこと 食事の用意 毎食きちんと用意することは本当に面倒です。土日は夫の担当(デリバリーなど)にし、息抜きしました。娘のご飯はベビーフードを活用。「1日分の鉄分」などと書いてあると、自分が作るより安心できます。(林原野乃花さん)子どもへの「ダメ」 この自粛生活で、子どもがやりたいことを止めると、ストレスがかかってのちのち子どもが爆発することを学びました。子どもの「やりたい」という意思表示には、ひとまず「いいよ」と言って、受け入れるようにしました。そこからがまた大変ではあるのですが…。(中村希未さん)

 

 

 

心理学の専門家に聞く頑張り過ぎない
子どもとの過ごし方 

 

 

受け入れられることで
得られる安心感

 

子どもと一緒だと、一日中親としてきちんと接しなくてはと思っている親御さんも多いと思います。でも、うまくできなくてもいいんです。

例えば、生後6カ月の赤ちゃんに新生児を抱く横抱きをしていたら、赤ちゃんは居心地が悪く、勝手に動いて一番いい抱っこの姿勢になります。そのように、子どもには、自分に合うように調整する力があり、親御さんが何でも完璧に応えてしまうと、自ら考え行動する力をそいでしまいます。

子どもと過ごす際に大切なのは、求められたときに、すぐに応じることです。目を合わせて、呼吸を合わせる、もしくは、相手よりゆっくり呼吸しましょう。そして子どもの話を受け止めます。時間にしたら1分くらいでいいのです。子どもはお父さんやお母さんに受け入れられるという安心感を得ると、すんなり自分の遊びに戻っていきます。それさえできていれば、あとは“ほどほど”でいいのです。

私は、育児中は、夜9時になると「お母さんはおしまい」と言って、自分の時間に切り替えていました。ずっと一緒に家で過ごし、親としての自分を優先していると、心が疲れてきてしまいます。自分の時間を持つことが、心の安定を保つことにもつながります。リフレッシュには五感に訴えるものが効果的です。「好きな音楽を聞く」「お気に入りのスイーツを食べる」など気軽に試してみて、心を癒やしてあげましょう。

 

 

古賀香代子さん 九州ルーテル学院大学人文科学部臨床心理学科長・教授。3歳児健診などで臨床心理士として、育児相談を受ける。小さい子どもやその親に心理学の側面からアドバイスを行う。