6月号では、将来を見据えて夢や希望の実現のために、ライフプランを作成し、中長期的に貯蓄や資産形成することの大切さをお伝えしました。今回は、いざというときに備える「緊急資金」について紹介します。
コロナ禍で、売り上げや収入が減った方も多いのではないでしょうか。「職を失った」「病気で廃業せざるを得ない」など、思いもよらない緊急時に生活を維持するための資金を「緊急資金」といい、最優先で用意しなければなりません。準備すべき金額は年齢や収入の形態、家族構成によって異なります。
緊急資金は多いに越したことはありませんが、会社員の方で日常の生活資金の6カ月分、自営業の方は1年分が目安になります。この差は社会保障制度の違いが影響します。会社員の場合は雇用保険から失業補償が受けられますが、自営業(個人事業主)の場合はそれがありません。緊急事態に遭遇したとき、わが家の「緊急資金」はいくら必要なのかを確認しておきましょう。
緊急資金としてお金をためる場合は、公共料金の引き落としなどがある生活資金口座とは別に、目的資金口座として緊急資金専用に口座を作ることをお勧めします。引き出しにくくするため、銀行カードは作らず、入金のみで目標設定額への進捗状況を確認しながら取り組んでみましょう。最低毎月の収入の1割~、可能な方は3割を貯蓄に回し、【01】で示した目安の金額に到達するまで継続しましょう。
予測できない緊急時には、すぐ使える現金が必要となります。緊急資金は、銀行口座にためていつでも下ろせる状態で用意しておきましょう。そのため、金融資産として運用に充てることはおすすめしません。
金融資産の性格には、右に示したように「安全性」「流動性」「収益性」があります。残念ながらこの3つの性格を併せ持つ金融商品は存在しません。緊急資金は現金化しやすい「流動性」を重視しましょう。緊急資金を確保できたら、ライフプラン実現への次のステップとして、「収益性」が期待できる商品で長期資産形成に取り組むことが大切です。
①貯蓄習慣が身に付く
緊急資金を用意した経験は、貯蓄習慣を身に付けることにつながります。継続して貯蓄すると、余裕資金が生まれ、資産運用への道が開けてきます。
②安心して長期投資を続けられる
ライフプラン実現のために長期投資で資産を形成している時に緊急事態に遭遇しても、緊急資金があれば、資産の取り崩しを避けられます。長期投資において株価の暴落時に現金化することは避けなければならない鉄則の一つです。資産運用は余裕資金で行うものです
わが家の「緊急資金」はいくらなのか? 準備できているのか、できていないのか? 漠然とした不安で立ち止まって悩むより、この機会に家族で一緒に確認してみましょう。不安を明確な課題にできれば、次の具体的なステップが見えてきます。