「子育てが落ち着いたら働こう」と考えている専業主婦(主夫)の中には、パートナーの扶養に入って働き、なるべく税金の負担を抑えたいと思う人も多いでしょう。今回は「年収の壁」について解説します。
<01>「扶養に入る」メリットは?
扶養とは、自身の稼ぎで生計を立てられない家族や親族に対して、経済的な援助を行うことをいいます。
扶養を受けるメリットはズバリ、税金や社会保険料の支払いが免除されること。
扶養している本人も各種控除を受けられるため、世帯の税負担軽減につながる仕組みです。しかし、扶養内勤務をしている人は「厚生年金の受給額が少なくなる」「傷病手当金や出産手当金がもらえない」というデメリットもあります。
また、扶養を受ける人が一定以上の収入を得るとかえって世帯収入が減るケースもあります。
<02>年収の壁は6つある!
扶養制度について考えるとき、「103万円の壁」「130万円の壁」などという言葉を聞く人も多いかもしれません。「壁」を超えると各種控除が段階的に受けられなくなります。よりよい働き方を見つける指針となるよう6つの壁について解説します。
「6つの壁」早見表
※年収100万円以下の場合、各税金や社会保険料は免除されます。
※納税者の合計所得金額が1000万円を超える場合、配偶者控除や配偶者特別控除は受けられません。
【106万円の壁】は条件を満たすと適用される
- 月額8.8万円(年収106万円)以上の賃金をもらっている
- 学生ではない
- 勤務先企業の従業員数が101人以上(2024年10月からは51名以上)
- 週に20時間以上働いている
- 雇用期間が2カ月以上見込まれる
以上の条件を満たすと、社会保険への加入が義務となり毎月の給与から社会保険料(健康保険料、介護保険料、年金保険料)が引かれることになります。
POINT
よく「働き損」と表されるのは、社会保険料の支払いが発生する 130万円(または106万円)の壁を超えた場合です。手取り減少のデメリットを考慮して130万円(または106万円)の壁を超えないように調整するか、扶養にとらわれず年収201万円を超えるよう収入アップを図るか、どちらかにするのが得策といえます。
<03>フリーランス(個人事業主)が扶養に入る場合
近年、子育てと仕事の両立のため、時間の融通が利きやすいフリーランスを選択する人も増えています。個人事業主も仕事が少ないうちは収入が安定している家族の扶養に入っていた方が、保険料や国民年金などの金銭面での負担を抑えられます。
その場合、年間の所得(売上−経費)合計額が48万円以下であれば配偶者控除を受けられ、48万円超〜133万円以下であれば段階的に配偶者特別控除を受けられます。
社会保険料の免除は、パートナーが加入している健康保険によって異なります。中小企業の多くが加入している協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合、「売上−仕入れなどの直接的経費」が130万円未満だと社会保険料が免除されます。
麗子先生のアドバイス
育児が少し落ち着いてから働き始めると「収入≒保育料」という現状に悩む方も少なくありません。すぐには家計にプラスされなくても、5〜10年後のキャリアアップにつながることもあるため、家族など身近な人に相談しながら長期的な計画を立てられるといいですね。
また、ここ数年、扶養についての改正が続き、「社会保険に加入できる人を増やす」「働き控えする人を減らす」動きが見えます。日頃からアンテナを張り、情報収集することも大切です。
CFP(R)ファイナンシャルプランナー 吉田 麗子さん
結婚を機に退職後、家計がピンチになり、お金の勉強をスタート。ファイナンシャルプランナー(CFP(R))を取得し、2006年起業。自身の”お金オンチ”な経験を生かした分かりやすいアドバイスに定評がある。小学生と中学生の三姉妹の母。福岡県在住。